赤也は教室の中を見た。仁王は机に座って、こちらをじっと見た。赤也は、「仁王先輩・・」といった。その表情は、怒りそのもので私は赤也に恐怖を覚えた。怖い。赤也は目が充血していて、仁王を睨んでいた。




「てめえ・・」
「赤也、落ち着きんしゃい」
「落ち着いてられるか!」




少し、抱きしめていた手の力が強くなった気がした。赤也が、本気で怒ってる・・?仁王はフッと笑い、知っとるかといった。赤也は、「なにをッスか・・」と冷静に喋った。




「魂のその後・・」
「魂のその後、ッスか」
「ああ」
「なんスか、それ・・」




仁王が言うには、魂をとられた人間・・所謂契約を悪魔と結んだ人間は肉体と精神こそは滅ぶが魂だけは悪魔の中で生き続けるらしい。魂だけ・・。




「意思もなく、ただたんに悪魔の中に生きるそうじゃよ」
「私は・・」




もし、私が赤也に魂をとられたとしたら、赤也の中で生き続けられることができるということか。どんな感覚なのだろう。私は、赤也の手をぎゅっと握った。仁王は、「それじゃあな・・、気をつけんしゃい」といって去った。赤也は手を握り返して、私を抱きしめた。安心する。





「赤也・・」
「俺、・・俺、のことが・・」




私は赤也の口を手で押さえた。私は人間で、赤也は悪魔だ。言っては、いけないと思った。私は、涙を堪える度に心が沼に沈んでいった。私の赤也を想う心は膨張していた。気づかぬうちに、急速に。もうすぐで、溺れそうだった。いや、もう既に溺れているのかもしれない。






(20070629)僕は溺れていく