赤也のことをずっと考えた。私は多分赤也のことが好きで、赤也も好いてくれてるんじゃないかなんて思う。自惚れかもしれないけれど。もし、赤也が好いてくれていたとしても、私は所謂獲物という人間でしかなくて、結局赤也とは一緒になれない。そう思うと、涙が出た。




「まーた泣いてんのかよ」




ずびっと鼻を啜ったら、赤也は、「泣き虫だな、は」といった。私はうるさい、と一言言って涙を拭いた。赤也は私の隣にどかっと座った。赤也は、「俺さー・・数十年前にこの学校いたんだよね」といった。え・・?この学校にいた?赤也は人間、だった?




「屋上から落ちて、死んだんだ」
「っ・・」




死んだというときの赤也の顔が冷淡で、切なかった。私は、「飛び降り・・?」というと、赤也は軽く笑って、「よく、覚えてねえな・・」といった。私はふいに、赤也を抱きしめたいと思った。いつも見ている赤也じゃない赤也を見て、切なかった。胸が痛かった。




「赤也・・」
「んだよ?」
「いつまで、いるの」
「それは・・」




赤也は答えるのを渋った。私はずっと赤也を見つめた。赤也は、「もう、そろそろ・・期限が来る」といった。私はそう、といって目を伏せた。赤也がいなくなってからのことを思ったら、ぽっかりと穴が開いたように思えた。唐突に、虚無という言葉が浮かんだ。寂しい・・。




「ねえ・・」
「・・んだよ」




お願いだから、いなくならないで・・とはいえなかった。私は、「やっぱ、いいや」といった。赤也はあっそ、といって部屋を出て行った。私は赤也がいない生活など、もう思い出せなくなっていた。






(20070630)無しでは生きられない