怖い怖い怖い
一体この人は誰なの






「へー俺のこと好きなんだ?」



ジローくんは笑ってじっと私を見た。だけど私を見ているその目は、笑っていなかった。怖い。私は背筋がぞくっとした。鳥肌が立っている。冷や汗が背中を伝った。私は無意識に後退していた。私はただ、ジローくんに告白をしただけのはず。気づいたら、背中に校舎の壁がぶつかっていた。ジローくんは壁に手をついて、息がかかりそうなくらい近い距離まで顔を近づけた。



「ち、近・・・」
「俺、さんが俺のこと好きだって知ってた」
「し、知ってたの?」
さんわかりやすいCー」
「そ、うかな・・・」
「そうだよ」



その間にもジローくんは私から目を離さなかった。震えが止まらない。目を逸らしたいけれど、逸らせない。ジローくんはあのテニス部の中では小さく見えてしまうけれど、私よりは大きい。私は少し見上げるようにしてジローくんを見た。



さん好きだよ」
「えっ・・・」
「友達として、ね」
「っ・・・わ、わかってる」
「ふーん・・・」



さっきまではあった笑顔が、いきなり消えた。つまんなそうに壁から手を離して、私からも離れた。心臓がありえないくらいにうるさい。・・・怖かった。否、今でもジローくんを怖いと思っている。まだ微かに震えている。ジローくんはもう、手をポケットに入れて歩いていた。



「あ、あのっ!」
「・・・なに?」
「その・・・返事、は」



「・・・俺、さん好きじゃなくなった」



そう言って去っていくジローくんの後姿を見て、私は暫くその場に立ち尽くした。





煌く闇 #01(20070813)