のんびり二人っきりで過ごすクリスマスも、もちろん素敵だなあって思った。わたしの作った手料理をテーブルの上に並べて、そしてそのテーブルの真ん中にはおいしいおいしいクリスマスケーキを置いて。そんな、のんびりまったりなクリスマスもとっても素敵だなあって思った。・・・・そう思ったのは確かなのだけれど。でも、でも、これはいくらなんでものんびりすぎはしないだろうか。わたしの自慢の彼氏、芥川ジローは2時間前にわたしの家にやってきて、2時間前からずっとわたしのひざの上でぐーすかぴーすか眠っているのだ。もちろん、こうなることも(少しは)予測していたのだが、でも今日はクリスマスなんだしジローくんはきっと眠ったりなんかしないと心のどこかで信じていたのだ。いや、信じていたかったのだ。でも、そんなわたしのささやかな願いすらもすんなり彼氏であるジローくんがぶち壊してしまった。(なんだかジローくんが悪者みたいに聞こえてしまうけど。)今日はクリスマスなんだし、もっと恋人っぽいことをしたいというのがわたしの大本音である! 「じ、ジローくん?起きた?」 「ん〜?」 「ねえジローくん!イルミネーション見にいこうよ」 「え〜、外雪降ってるし、寒いよすごく」 「でもほら、クリスマスなんだし。ね、いこうよ」 「う〜」 クリスマスじゃなくても、二人でいろんなところへ出かけたいけれど、それはムリな話だもの。ジローくんが行きたがらない。(わたしは遊園地にもショッピングにも映画にも水族館にも行きたい!行く気まんまんなの!)きっと、ジローくんは寒いのがすごく苦手で冬は冬眠しているんだと思う。ひつじだけど、くまなんだ。(あれ?ひつじも冬眠するのかな?もし、ひつじも冬眠するんだったらジローくんはやっぱりふわふわのひつじさんだ。)寒いから、こうやってコタツの中で冬眠しているのだ。この寒いのが消えて、春になったらジローくんは目をパッチリ覚まして元気になるのに。あーもう冬のバカヤロウ!わたしは冬好きだけど、バカヤロウ! 「オレ、ちゃんと二人がいい」 「え?」 「二人でね〜、こうやってあったかいとこで寝て、それで一緒にクリスマスを過ごしたい」 「ジローくん・・・。そ、そうだよね!クリスマスはコタツの中で過ごすもんだよね!」 「そうだよ〜。ね、早くコタツ入って寝ようよ」 「え!また寝るの?」 「うん。今度はちゃんといっしょに」 ジローくんはコタツの中にもぐりこんで、早く、早く、とわたしをせかした。わたしもしょうがなくジローくんの隣にもぐりこんで、「あったかいね」と一言つぶやいた。わたしの理想のクリスマスとは程遠いものとなってしまったけど、ぽかぽか体はあったかいし、だれにも邪魔されずに二人っきりの時間を過ごせるし、これはこれですごく素敵だなあって思った。ジローくんが「二人でクリスマスを過ごしたい」って言ってくれたことがなによりわたしはうれしかったよ。わたしの一番のクリスマスプレゼントになった気がする。イルミネーションもキレイな夜景も、なにもかも見れなくちゃったけど、こうして二人でいられるんだからもういいや! 「ジローくん、ジローくん」 「なに?ちゃん」 「メリークリスマス!」 「うん!メリークリスマス!」 「サンタさん、来てくれるといいね」 「ちゃん知ってる?サンタさんは、良い子にしかプレゼントくれないんだよ」 「え?それ遠まわしにわたしのこと悪い子って言ってる?」 「え〜?気のせいだよ〜」 「(あれ〜?ジローくんの笑顔が黒く光ってるような気が・・・)」 「ねえ、ちゃんちゃん」「なーに?ジローくん」「来年もこうやっていっしょに過ごしてたいね」 (071227 涼に1日遅れのメリークリスマス!) |