あれから恥ずかしくて、不二くんとは顔すらまともにあわせていない。それ以前に、私が避けているのだから当たり前といえば当たり前なのだが。あからさまに避けすぎたかな、と思うけど・・でも、不二くんの姿を見かける度に顔は赤くなるし、鼓動は有り得ないくらい早くなるし、私がどうかしちゃったみたいだ。友達が、「面白いくらいにわかりやすいのね」といった。 「は?意味わかんないんだけど」 「ははっ。可愛い可愛い」 「ちょ、頭くしゃくしゃにしないで!」 「大丈夫。その内わかるから」 その内って・・。内容くらい教えてくれたっていいじゃんか。少し私が考え込んでいたら友達が、「そうだ」と何か思いついたようにいった。私はなに?と聞いた。 「不二くんと話してないんでしょ?」 「え、ま・・まあ」 「次は男子が体育じゃん」 「そうだったね」 「応援したげな」 私がは?というと同時に、菊丸くんが隣を通った。そして、不二くんがそのあとについていくようにして私の隣を通り過ぎた。友達は、「菊丸がんばれよー」なんていった。ほら、と急かされて私は俯いて、「不二・・くん、」といった。あー・・もう、どうにでもなれ! 「なに?」 「が、がんばってね」 「クスッありがとう」 どきん、と心臓が大きく揺れた。このまま死んでしまいそうなくらい鼓動が早い。「ほら、本人なんも気にしてないよ」友達が言う。今は気にしてるとかそんなことよりも不二くんの笑顔を見れたことが、嬉しかった。めちゃめちゃ嬉しかった。 「ど、どうしよ・・・」 「なにが」 「嬉しくて死にそう」 「死ね」 「ひどっ」 本鈴が鳴り響いたあと、外からは男子たちの賑やかな声が聞こえてきた。「おっ始まったかな」種目は野球らしい。うちのクラスは野球部員が少ないからハンデが1番少なくていい、という理由らしいが。不二くん、テニスもすごいって聞いたけど・・・野球もできるのかな?女子も少し静かになって、私は読書をしながら耳を澄ませた。カキーンという、ボールを打った音が私の中で響いた。 |