まだ、手の感触が残っている。私は手を見てから、ぎゅっと握り締めた。忘れないように。なんとなく、不二くんに会うのが気恥ずかしかったけれど、大して気にしていないようだったから安心した。それと、相合傘のこと。 この言葉だけは鮮明に覚えている。声のトーンからいっても本当に嫌ではなさそうで、単純だけど嬉しかった。不二くんのことを考えるともの凄く胸のところがあったかくなる。こんなことは今までで初めてだった。これが、誰かを想うということなのだろうか。 今日が提出期限だったノートがあったことに気づき、私はノートを持って職員室へと向かった。足が軽い。今日は何をしてもうまくいきそうな気がした。先生にノートを提出して出ようとしたら入り口のところで人とぶつかってしまった。 「ご、ごめんなさい」 「いや、こちらこそ・・か?」 「あ、手塚くん」 手塚くんとは委員会が一緒だった。話してみると、思っていたよりも面白くて、優しいことを知った。私は、「何かあったの」と聞くと、手塚くんは、「ああ、来客でな」といった。後ろには、あまり見たことがない制服を着た人がいた。すごく美人だ。 「手塚、この子は・・」 「ああ、俺と委員会が一緒でな」 「です」 「俺は、立海の幸村。よろしくね」 にこっと微笑んだ幸村くんはとても綺麗だった。私は、「え、は・・はい。よろしくお願いします」と頭を下げながらいった。幸村くんはフフ・・と笑って、手塚くんについていった。いい人なんだろうな、と思った。そういえば、立海って確かテニスはもちろんだけど、スポーツがすごい学校って聞いたことがあるんだよね。幸村くんは手塚くんと一緒にきたから、テニス部なのだと思う。強い、のかな。私はそんなことを思いながら、教室へ戻った。気持ちがさっぱりしていて、何もかもが新鮮に感じられた。 |