「あ、」 「んぁ」 なんと間抜けな声だろう。この間抜けな声の主は、芥川慈郎。 単には私は午後の授業をサボろうと屋上へきただけなのに、学園の眠りの王子(通称、ね)に会ってしまうとは! しかも、ね・・・寝起き。(聞いてたのより百倍可愛いぜー)(百聞は一見にならず、だ) そういう私らは、初対面だ。(私は知ってるけど向こうは知らないと思う、私の事なんて) ちょっと時が止まったかのような沈黙が流れたが、次の瞬間には「あ、どうも」なんていって挨拶をしていたり、芥川君・・・は欠伸を堂々としやがった。 (ま、私も教師の目の前で欠伸するけどね) 「・・・ね、」 「なっ・・・なに?」 「(今思いっきり吃驚してたよねー)名前、なんていうの」 「・・・、」 「じゃ、ちゃん」 「なに」 「て呼ぶね!」 はぁ。なんか、さっきより妙に目が見開いてるような気がするんですけどー。 気のせい?あ、気のせいじゃないのね。うん、ってことはですね。 そのー、あのー、いわゆる・・・覚醒っていうやつ? あーなんか誰かが「ジロー君はね、覚醒するとすっごく明るくなるんだよっ」って言ってたような。 あー・・・私的にさ、あんまり賑やかなのって好きじゃないんだよね。 (どちらかっていうと、いんどあ?派だからな)(そのおかげで、肌の色は白いんだよね。他の子よりは) 「芥川君は」 「ジロー、」 「は?」 「ジロー、て呼んで」 名前で呼べってね。 そうか、みんながジローって呼んでいるのは本人がそう呼べって強制してるからだったわけね。 納得だわー。だったら、私は意地でも芥川君って苗字で呼び続けてあげようではないか。 (意地っ張りなのだー) 「・・・芥川君はなんでここに?」 「(む、無視されたっ)いつもこの時間は寝てるんだー」 「へぇ」 「今日は、空がキレイに見えて」 「ん」 「屋上に、こようって思ったんだ」 「そっか」っていいながら、私はそっと隣に座ってみる。 本当に、キレイだと思う。秋晴れの空は、好きだ。(というか、秋が好きだ。) ちょっと静かになったなーなんて思って、芥川君の方を見たらすやすやと寝ている芥川君の姿が。 あぁ、そういえば、寝るためにここにいるんだもんな。 なんて納得してみたりする。それにしても、なんとも気持ちよさそうな顔で寝ているなー。 ホント、寝るのが幸せって感じじゃないの芥川君て。 ・・・この姿を見ていると、騒ぐ女子の気持ちがわかるような気がする。 (だって、すっごく可愛いんだよ?!女の私より可愛いんじゃないの) 「ふぁ・・・私も寝よっかなー」 私は、目を閉じた。 *** 「あれ、」 「あー・・・」 翌週、またもや屋上にいくと芥川君の姿が。 そういやあ・・・ここんとこ、ずっと晴れだったな。 私は芥川君に「また、会ったね」っていうと「先週もさ、この時間じゃなかったっけ」って、よく覚えてるね・・・。 私はすぐに芥川君の隣に行って、ちょこんと座った。 今日は、眠くはない。から、体育座りで芥川君の隣にいようと思っている。 (勿論、芥川君が寝たら私は授業に戻るつもりだ。) 「芥川君、」 「ん」 「キミは・・・」 そのあとの言葉は、呑み込んだ。というか、言わなかった。 今、言うべきではないんだろうって瞬間的に思ったから。 いつか、いつか・・・言おう。(忘れなかったら、の話だけどさ!) 「ううん、やっぱ・・・いいや」そういうと、芥川君は頭にハテナマークを浮かべながらも「? うん」って納得してくれたっぽい。 あー、こういうときは策士な人じゃなくてよかったって思う。(例えば、忍足とか滝とか・・・) 「あー・・・今日は寝ないんだね」 「うん、ちゃんといたいからね」 「私と?」 「うん」 物好きだなー、芥川君。私より昼寝のが好きだろうに。 それとも、私が退屈しないように・・・とか。ま、それは百分の一の確率としておこう。 (有り得ないからねっ!そんなことっ)「ありがとね」って言うと、芥川君は俯いてしまった。 あれ、やっぱ無理してないか? 芥川君よ。「ね、やっぱ寝たほうがいいんじゃない?」って聞いたら「ううん、いいんだよー」って言ってくれたから、多分いいんだろうと思う。(多分、ね) 「(・・・気づいてないのかなー)ちゃんはー」 「なに?」 「好きなやつとか、いたりするの?」 私は多分、すっごい顔でブンブンと首を振っていたと思う。 だって・・・ねぇ?そんなのいないのに、そういうことを聞かれたら驚くに決まってるじゃない。 (あ、それしにても、あんなに酷い顔はしないかもね)(さ、最悪だー) 芥川君は「あははっそんなに否定しなくてもいいCー」って笑ってた。(キュンッ)へ? あ、なんか胸がキュンッて言ったよね、今。な、なぜ・・・? てか、キュンッてする場所じゃねぇだろ、ここ。わ、わかんねー!(自分の体、なのに!) 「そ、そういう芥川君はいたりするんじゃないの?」 「俺?俺はー・・・わかんないんだよねー」 「わかんない?」 「そう」 「でも、はっきりしたいなー」っていう芥川君が、すごくかっこよくみえた。 あぁ、芥川君に想ってもらえるその人はすごい羨ましい。・・・え、なんで? わ、私何思ってるんだろ・・・。羨ましいとか、私はそんな・・・え?(ちょ、混乱してきたよー) ま、まぁ、今は考えるのをやめよう!・・・「私も、」 そういうふうに、想えるヒトがほしい。って思った。 *** 「はぁっ・・・はぁっ・・・」 「どうしたの、芥川君」 いきなり入ってきたのは芥川君で、しかも息がすっごく乱れていて、走ってきたんだなって瞬間的にわかった。 そして、至近距離で「よ、呼び出しがあってってほんとっ?!」って。 よ、呼び出しって・・・単なる他のクラスの男の子からの呼び出しなのに。 「うん、イジメとかじゃないと思うから、安心していいよ」っていうと、芥川君は溜息をついて、笑い出してしまった。 (え、え!?な、なにごと・・・っ?!) 「ど、どうかした?」 「っううん、やっぱ、ちゃんは、ちゃんだなって思って・・・。ぶはっ」 し、失礼だな。私は私って・・・どういうことさ、まったく。 私はあからさまに頬を膨らませ怒っていると示すと、芥川君は「あー!ごめんね!怒った?」なんて上目遣いなんかで聞いてくるもんだから、「ううん、そんなには」って言っちゃったしさ! (結構、上目遣いだとクるんだよ・・・っ!!) 「ちゃん、」 「なに?」 「俺、ちゃんのこと好きだなー」 「そっか」 そっかそっか私のことを好き・・・・・・好き?好き・・・・・・はぁ?! 私のことを?!芥川君がぁっ?!あ、有り得ない・・・「う、嘘ぉ」っていうと「ほんとー」って。お、落ち着け・・・私。・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ふぅ。 えーと・・・私は、芥川君といると楽しいし、落ち着くし、なによりも他の女の子が出てきただけで嫉妬しちゃったような気がするし・・・好きってことなんでしょうかね? (うあーーーーー自覚したらなんか恥ずかしくなってきちゃったよ) 「えっとー・・・その」 「うん」 「とにもかくにも、ですね」 「うん」 「芥川君のことを、ジローって呼ぶこと。そして、隣にいること。これが」 「ん」 「私の、願い・・・だったりしてたんですよ」 言った後に一気に熱が顔に集まってきた。(今顔が真っ赤なんだろうなー・・・)あく・・・ジロー、はというと、私に今にも抱きついてきそうな勢いではしゃいでるんですねってうぉ?! こ、この人やっぱり抱きついてきたよーく、苦しい・・・っ(ヘ、ヘルプ ミー・・・・・・)「じ、・・・・・・芥川君、離してっ」っていったのに「いやだー」って駄々こねてるよー苦しいよー 「っと、そだ」 「は?」 「こっこほん。えーと、ちゃん、」 「な、なに?」 「俺の名前はジローって呼んで。そんで、俺のカノジョになってください」 「も、勿論っ!よろこんでっ」 |
全てを変えるのは、
一言で。