ばんっばんっ!という拳銃の発砲された音と共に聞こえてくる、今回のターゲットの男の断末魔。 それは次第に聞こえなくなり廃墟の中はしん、と静まり返った。 私は男の死を確認するためにコツン、コツン、という音が廃墟の中に響くのを感じながら、ゆっくりと近づいた。 私は横たわっている男の前にしゃがみ、まず心臓が止まっているかを確認した。 しかし普通だったら聞こえなくてはいけない、とくん、とくん、という規則的な音は聞こえない。 そう、さっきまで生きていた"人間"は今ここで"人形"と化したのだ。・・・任務完了だな。 私は人形と化した人間をゆっくりと地面に置き、立ち上がった。取り出したのは、無線機。 (そう、この任務成功を報告するために・・・ね)



ピッ・・・  ザーザーザー、



「あーあーあー応答願います、」
「・・・こちら、雲雀」
「あ、隊長ですか?こちらは任務成功しました」
「そう」
「これからどうすれば、」

「ちょっとそこで待っててよね」

「、え?ちょ・・・」



プツンッ



ツーツーツー、と無線機から無機質な音が続いた。 私はふぅ・・・と少し溜息をつき、近くの壁に凭れた。 そして、先程死亡を確認したターゲットを見据えた。あの男、何をしたんだ? あの温厚な、10代目からの直々な命令でこの男を殺らなければならなかったのだから、相当なことをしたのだろう。 (殺しの任務は久しぶりだったからな、)(いつもは書類の整理、整理の繰り返しさっ) それにしても、死体処理班はなにをしているのだろうか。 さっさと来て、処理してくれないと私も動きようがない。 (死んでいるのにまだ出血は止まってはいなくて、)(周囲にツーンと鉄の香りが香っているのだ) 私はすることもないから、仕方なく、自分の愛用の拳銃の手入れをすることにした。(すると、)



「ッ! 誰だッ



カチャッ・・・



拳銃の手入れをしようとしたら、不意に人の気配がした。私は反射的に振り向き、拳銃を構えた。 「・・・何者だ」そういうと、よく聞きなれた声が廃墟の中に響いた。 (あ、あれ?この声は・・・)「ワォ。は自分の隊の隊長の気配も忘れたの?」「た、隊長?!」 そう、近づいてきたのは正しく隊長だ。数分前に会話を交わしたばかりの隊長だった。 (こ、この状況はヤバいの・・・か?)「な、なんでここに・・・」 私が滅茶苦茶動揺しているのがわかったのか、隊長はすぐに答えてくれた。 「なんでって、いちゃ悪いの?」隊長は少し睨むように私を見て、答えを求めた。 「いちゃ悪いなんて、言ってないですけど」 少し語尾を濁らせながらそういうと、隊長は鼻で笑ってから、横たわっている死体を見据えた。



「今回もまた、躊躇なく殺したの?」
「ええ、まぁ・・・」
「そう」



何が言いたいのだろうか、隊長は。 私は拾ってもらった時から、ずっと、人間が嫌いでなんのためらいもなく殺してきた。 (何を今更、言うのだろうか・・・隊長は)「隊長は、何がいいたいのですか」 私は幼少期にされたことを忘れはしない。そう、一生。「別に、」「そうですか」 しばしの沈黙が私と隊長の間に走った。しかしそれは居心地の悪いものではなくて。 私はゆっくりと隊長から目線を外し、未だに残っている死体を見つめた。 あ、出血はもう止まったみたいだ。しかし、死体の周りには固まってしまった血液が残っている。 (嗚呼、これは"人間だった"という証・・・) 人間とは汚いものだなって思う。無論、その中に私も含まれているが。 それに比べ、"人形"は綺麗で、美しく、真っ白だ。



「隊長・・・いえ、恭弥」
「何?」

「私、人間なんて嫌いよ」
「そういうも、人間だけどね」




汚い人間、綺麗な人形。
(それでも私は"人間"として生まれ、心を授かった)(そう、"人間"として生まれたからこの人を愛せたんだ)