ジリリリリ・・・ いつもより少し早く鳴った目覚まし時計に少し嫌悪感を感じながら、ゆっくりと上半身を起こした。 自分が低血圧なことをわかっていての行為だ。 ・・・そう今日、今日だけは早く行って教室に鞄を置かねばならない。 (朝練は、そのあとにでも行こう) 俺が思うからに、もう気の早いヤツは俺の机の上にでも置いているのではないか・・・2年間で学んだことだ。 (一昨年も去年も、遅く起きてしまったから女子の群れに捕まってしまったのだ)(今年こそは、) 頭がまだ少しクラクラしているのを我慢して、制服へと着替え始めた。 「・・・寒っ」 むちゃくちゃ寒い朝だった 流石にこんなにも早いと誰も見かけないものだ、と改めて思った。 (いつもは朝練に出る時間ギリギリに来るもんだから、人がたくさんいるのだ) それにしても、見事に殺風景だ。 (いつも見慣れているはずなのに、人がこうもいないだけで、こんなにも違うものなのか) 冷たい風が家と家の間を通り抜け、やっと温まってきた俺の体を襲った。 (ったく、寒いと言うとるじゃろうに・・・)(神様は意地悪じゃの) (・・・む?神様なんて、おるんじゃろうか)ま、どうでもいいか。 しかし、こんなに静かなところを通れるのならば早起きもいいもんだな、そう思った。 「ま、いつもはできんがの」 たまにくらいは、そう思った。 教室へ向かう途中、体育館からはなんの運動部じゃろうか・・・すごく声が廊下まで響いて聞こえた。 (テニス部は、こんなに声・・・出しちょったじゃろうか?)(はて・・・どうだったかの) もし、こんなに朝早くからテニス部があったら・・・俺、来ちょったじゃろうか? (いや、ほんとに心配じゃ)(絶対、起きれないじゃろうな・・・毎日とか、無理じゃろ) こんなことを思いながら、教室へと足を速めた。 少し、後ろから女子の声が聞こえたような気がしたから。 (それでも、アイツかな・・・とちょっと期待してしまう俺って・・・) 「おっ、教室は暖かいんじゃの」 教室に入ると、暖かい空気が俺を包み込んだ。先程までの寒さが、一気に消えていく。 (ああ、暖かい・・・) このまま教室に残っていてもいいのだが、今日だけはそうは問屋が降ろさない。 急がなければ、俺が今日1日を女子の大半に流されることになってしまう。 (それだけは、勘弁したいところだ)俺は机の横に鞄をかけ、脇目も降らずに教室を出た。 (そのときに、いるはずがないアイツが視界に入ったような気がしたが・・・気のせいだろう) 俺は、流石に屋上に行く気にはなれなかったので保健室へと向かった。 ガラガラ・・・保健室のドアを開けると、やはり無人。先生すらいなかった。 (まぁ、いてもいなくても変わらんけどな) 俺は、朝練の時間までの暇つぶしってことで寝ることにした。 (でも、今寝ると多分3限くらいまで起きないじゃろうな)・・・ま、いいか。 真田には女子から逃げていた、とでも言っておこう。・・・俺は、ゆっくりと目を閉じた。 「・・・王、仁王!」 「・・・か、」 「あ、起きた」 「正確に言うと、"今"寝ようとしたんじゃが」 「あーごめん」 「ま、ええけどの」 「あ、そうそう!」 「ん」 「はっぴーばーすでー」 「・・・あ?」 「あ、あれ?違ったっけ?」 「いんや、当たっとるけど。お前さん、どこから仕入れてきたんよ?その情報は」 「え、普通にクラスの女子に聞いたけど?」 「・・・そか」 「、おめでと」 折角眠れると思ったのに、この女はわざわざそんなことを言うために起こしたというのだろうか。 なんというか、複雑な気分じゃのう。(嬉しいって気持ちも半分あるんじゃよ) そう、それは俺がのことを好きだから。だから、が俺を見つけてくれたことも、「おめでとう」と言ってくれたことも、この状況も、俺にとっては素晴らしいプレゼントとしか思えない。 (嗚呼、なんと嬉しいプレゼントの数々じゃろうか・・・!) (これほどまでに、嬉しかったことは一度もなかったかもしれない!) 俺は、照れて真っ赤になっているの頬を手で包み込むようにして、唇を重ねた。 ストーキング・ユー! (「におー」「なんじゃ」「あのさ、」「ん?」「朝から尾行していたって言ったら怒る?」「・・・は」)(どうやら、俺はに尾行をされていたらしいです) |