うーん、今日はなかなか会えないなぁ・・・。 いつもは一回は擦れ違ったりするのに、と思いながら帰りのホームルームを聞いていた。 (正確に言うと、聞いていたっていうよりも見ていた?みたいな!) (うん、聞いてはいなかったね)今日は愛しの後輩の誕生日だ。 プレゼントも用意してあるし、勿論、心の方も! (嗚呼、本当に今日に限って神様は意地悪なのね・・・!) っていうか、さっさと終われよホームルーム!(先生、早くしてくださいよ!) (私の一大事なんですよ?!)(・・・それほどでもないか)



「・・・ってことだからな!じゃ、今日はこれで終わりだ」
「起立、礼ー」
「「さよならー」」



私は鞄を急いで持って、教室を走って出ました(どうか、どうか間に合って!) (せめて、部活が始まる前に渡してしまいたい・・・!)





* * *






私は体育の時間でもこんなに走ったっけ?ってくらいまで、走って走って走りまくった。 (だって、間に合わなかったらどうしようって・・・!) 足が遅い私ながらも、私なりに必死に走ったのです! (っていうか、もう教室を出てからすぐに息が上がってきちゃったけど・・・!) (頑張ったんです!)私は足を止めずに、テニスコートまで走った。 もう限界に近いけれど、愛しいあの人の為に休めることはできないのです! 私は、段々見えてきたテニスコートを見て、プラス愛しいあの人を探した。 (それでも、テニスコートに着くまでは足を休めることはしないのだっ) あ、あの後姿は・・・っ



「・・・君っ、」
「?」
「ひ、よし君・・・!」
「先輩ですか」



私は日吉君の元まで行き、息を整えようとするけれどなかなか整ってくれない。 (はぁ、はぁ・・・)私は早く、早く日吉君に「おめでとう」と言ってあげたいんです! でも心とは裏腹に、体はなかなか落ち着いてはくれない。 (そりゃ、最近は体育で陸上の授業が終わっちゃって走ってなかったけど!) (それでも、ちょっとくらいすぐに静まってくれてもいいのに!)(そんな私にイラつく私、) 「ちょ、っと・・・待って、ね」私がそういうと日吉君は少し溜息をついてから、「少しだけですよ」といった。 冷たい言い方に聞こえるけれど、私には安心する声だった。 (あれ、このことを惚れた弱みって言うの?)



「ふぅ・・・、」
「なんであんなに走ってきたんですか、先輩は。運動音痴でしょう」
「だって!・・・、」
「だって、・・・なんですか?」

「日吉君、誕生日でしょ?その・・・おめでとうって早く言いたくって」



あ、やばい・・・今すっごく真っ赤かもしれない。 (だって、ものっそい顔が熱いんだもん!)(は、恥ずかしい・・・っ) ・・・そういえば、日吉君の反応はどうなんだろうってチラッと顔を上げてみたら、少し顔が赤くなっている(ような気がする)日吉君がいて、鼻(なのかな?)を抑えていた。 あ、あれ・・・日吉君?も、もしかして・・・いや、もしかしなくっても・・・! 「て、照れてたり・・・?」ちょっとからかい口調で言ってやると、日吉君はふい、と後ろを向いてしまって「わ、悪いですか」って。 か、可愛いー!(え、めっちゃ可愛いんですけど!)



「日吉君、こっち向いてー」
「嫌ですよ」
「なんでよー」
「先輩、からかうじゃないですか」
「からかわないって!っていうか、照れるような台詞じゃなかったでしょ」

「、先輩が            」



嗚呼、なんとなくだけど・・・私が日吉君のことを好きになった理由がわかったような気がする。 というか、運命?みたいな。(絶対、赤い糸で結ばれていたんだよ!) (きゃーっなんてロマンチックなんだろう!) 私はこの一年間で、いろいろ学んで遊んで・・・変わりゆく景色を何気なく見ていたんだろう。 だけれど、たった一つだけ・・・変わらぬもの、否気持ちを抱きました。 日吉君が大好きだって、気持ち。 (そう、この気持ちだけは誰にも負けなかったし、負けるつもりはなかったんだ) (混ざってしまういろんな気持ちの中で、ただ一つだけ色あせることなく私の心に残っていた気持ち、)



「日吉君、」
「なんですか」

「おめでとー」




混ざり、変わりゆく景色の中に

(あなたを好きだという気持ちは、色あせることなく、私の心の中に留まっているのです)