「「あ、」」



放課後、私は未だに教室に残っていた。勉強をしている。勉強と言っても、居残りのほうだ。 (今日の数学の抜き打ちテストがむちゃくちゃ点数が低くて、呼び出されちまいました) (ほんと、ものっそい呆れた顔で説教されたのは気にしないにしよう) で、私はいい子だからちゃーんと残ってお勉強したんですよ。 勿論、部活動がないみんなは遊び放題なわけで残っている人なんていないって思ってましたよ。 (っていうか、反対に集中できてよかったり?) (やっぱり、こんな広い教室に一人ってのは寂しいね) ちょっと、勉強も飽きちゃったかなっていう頃にね、丁度現れてくれました。 (あーもう、ほんと救いの神ですか、この人は!) (先生に言って、帰るときにフォローしてもらおう!)(なんていいアイディアなんだろう!)



「宍戸じゃん」
かよ」
「むっなによ」
「どうせ居残りでもさせられたんだろ」
「うっ・・・!」
「図星か」



ははは、と宍戸が笑った。あ、こいつ本気で笑いやがった。 (なんて失礼な・・・!)でも、宍戸が作り笑いしてるのも違和感あるよなー。 (っていうか、嘘がつけないよね宍戸ってさ)(正直者ってことにしておこうか) そういえば、あれ、なんでここに宍戸がいるんだろう? ってか、なんかまた生傷増えてないですか?(あれ、気のせいかな?) (ってか、結構思ってたよりもテニスって危険なスポーツなのか?) 宍戸は、自分の席へと向かっていって、机の中から教科書とプリントを出した。 (あ、忘れ物取りに来たのね)(やっぱり、何の用もなく、教室なんかに来ないよね!) あー納得。私だって、わざわざ何も用がない時になんか、教室に来ないもん!



「あーやっぱ、忘れ物取りにきたんだ?」
「あー、そういえばそういうことになるけどよ」
「?何ソレ、すっごく気になる言い方ー」
「あー忘れ物と、忘れ人?みたいな」
「ふーん」



人かー忘れてたのかな?誰かと待ち合わせ?でも、待ち合わせとかするようなやつだったっけ? 宍戸って。ま、細かいことは気にしないことにしよう。 さーって、そろそろお開きにしましょうか、勉強会はっと。 (だって、宍戸が来てから何も私進んでないもん)(集中力が途切れましたー) 私は鞄に教科書とプリントを入れ、ガタリと音を立てて、立ち上がった。(ふぁー疲れた!) ぐっと腕を伸ばして、チラッと宍戸の方を見たら何故か知らないけど、こっちを見ていた。 (あれ、なんか用なのかな?)私は鞄を持って、まず教室を出ることを優先にすることにした。 (用事はそのあとでもいいかな!) 「さって、帰るかな!」「え、おま・・・先生に言わなくていいのかよ?」 「え、別によくない?ほら、宍戸も行こうよ」「え?あ、あぁ今行く」





* * *






「あー疲れたよ」
「そりゃあな、結構いたよなお前」
「え?なんで知ってるの?」
「お前、集中してたっぽいから話しかけないでやったんだよ」
「そっかーありがとね」



そういうと、宍戸はふいっと目を逸らしてしまった。(あ、あれ?なんかした?私って、) 私も前を向いて、歩いた。(だって、ずっと宍戸を見ているわけにもいかないからね) (そりゃ、宍戸もかっこいいけどさ!)少し、静かになった。 部活動もやっていないので、廊下には私と宍戸が歩く靴音が響くだけ。 (ちょっと、虚しいかもしれないな) (でも、この沈黙は気まずいものではなくて、すっごく安心できる沈黙だった) 私が宍戸に聞こうと口を開いたら、「「あのさ、」」被ってしまった。 (あーなんだこのシンクロは!)(っていうか、結構気が合うんだよね!) 「あ、宍戸が先にどうぞ?」「いや、からでいいぜ」なんだこの譲り合い。(宍戸は優しいからな!)



「じゃあ、聞くけどさ」
「おう」
「なんでそんなに傷が日に日に増えていくのさ?」
「え、お前気づいてんのか?」
「いや、普通に絆創膏とか増えてるでしょ」
「お前、」
「ん?」
「いや、なんでもない」



変な宍戸!(なんでもない、とか)(気になるなー!まったく、) あれ、ちょっと苦笑い?私、変なことを言ってしまったの?(そうなのであれば、謝らなければ!) 「え、ごめんね?」「は?なにがだよ」「だって、宍戸苦笑いしてる」 「、いや、お前は悪くないからな」「そうなの?」「そうだ」そうなのかー。 あ、そういえば、宍戸も言いたい?ことあったんだった!聞いてあげなくちゃ、だよね。 聞いてもらったんだし!「じゃあ、次は宍戸の番!」「あ?」「さっきの、」 「ああ・・・あれは、もういいや」ふーん、と私は残念そうに言ったと思う。 (だって、聞きたかったんだもの!) そうこうしているうちに、宍戸と一緒に自転車置き場の前まで来てしまった。



「宍戸はチャリ通?」
「おう。家が微妙なところだからなー」
「いいなーチャリ、」
「・・・乗るか?どうせ、方向一緒だろ?」
「え、いいの?!やたー」



「オラ、早く乗れよ」と宍戸。私は重いよ、と断言してから乗った。 (よし、これで重くても文句を言わせないぞー!) 私が乗ったのを確認して、宍戸は「しっかり捕まってろよ!」と言った。 「言われなくても!」そう、返した。(勿論、捕まるに決まってるじゃんねー?) (落ちたら嫌だもん!)私は笑いながら、「出発ー!」って言った。 (宍戸がなんか言ってたような気がするけれど、風の音で聞こえないや!) 「え、なんて言ってるのー?」「ちっ。なんでもねーよ!」「そう?」 私は思った以上にスピードを出すので、驚きながらも必死に宍戸に捕まっていた。 (は、はや・・・い!)(ってか、風が冷たいよ!顔が、手が痛いよ!ついでに足も!)



「なあ、」
「んー?」
「一回しか言わないから、よく聞けよー?」
「おっけー」

が好きだーーーーー!」



私の顔は今、真っ赤だろう。(だって、だって、) (宍戸に言われるなんて思ってなかったから、) 「嫌よ、」「は?」「一回なんて言わないで、何度でも言ってよ」 なんて私は我がままなんだろう、って言ってから思ったけど、本当にそうだから。 (一回だけなんて、悲しいことは言わないで、よ)



「私は言うよ!宍戸が好きーーーーー!大好きです!」





一度と言わず、何度でも
(一回しか言わねぇって言ったのはよ、その・・・俺が恥ずかしいだけなんだよ)(本当は、大好きなんだぜ?、)