はぁ、はぁ、はぁ、息が切れて、辛いが足は止められない。(そう、止めたら終わりなのだ) (そう、なにもかも・・・終わりだ)私は後ろをチラチラと振り向きながら、全速力で走り、走る。 しかし人間というものには、必ずしも限界というものがあって、私にもその限界というものが近いことが本能的に分かった。 (や、ば・・・い)でも、やめるわけにはいかない。 走ることをやめてしまったら、私は私でなくなってしまうから。 (せめて、私が私であるために、走ることをやめてはいけないのだ)「く、そ・・・っ!」 はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、先程よりも激しく切れる息を整えたいが、その時間もおしい。 そんなことをしている暇があったら、走り続けた方がまだ安全だ。 (アイツは気配をも探せ、そして、短時間の間に私を見つけてしまうのだ) (見つかったら、そこで私は終わるのだ)バァンッ!「うっ・・、!」 銃声とともに私の右足に鋭い痛みが走った。(う、あ・・・い、た) ドサリ、と倒れた私の上にソイツは馬乗りになって、長い・・・槍?を私の顔の真横に突き立てた。 (やば、目が霞んでき・・・た) 「くふふふ、もう逃げられませんよ」 「く、そ・・・っ!」 「貴女もよくここまで逃げられましたね」 「お褒めの言葉、ありが・・とう」 「貴女との追いかけっこ、何ヶ月間でしたっけ?」 「覚えてね、ー・・」 「6ヶ月と2週間ですよ」 「はっ、知らね・・・よ」 「くふふ、これも今日で終わりです」 「、即死・・・させろ、よな」 「さぁ?どうしましょうかね」 「てめっ・・・!つぅ、」 嗚呼、半年間もコイツと追いかけっこをしていたのか。(飽きっぽい私なのに、よく続いたな) (はっ、最後なのにこんなことを考えていていいのだろうか)寒い、な。 ま、冬なのだから当たり前なのだろうが、そういう気温での寒さではなく、馬乗りになっているコイツの冷酷な笑みと熱が出てきた所為だろう。 (鳥肌が、治らない)嗚呼、足が痛い。(痛い、なんてもんじゃねぇけどな) それにしても、寒さが先程よりも増してきているような気がする。 プラス、眠くなってき・・・た。(嗚呼、でも、激痛が私を襲って、眠らせてくれないのだ) 「くふふ、苦しそうですね」「随分、暇、なんだな?」 「ええ、貴女を地の果てまで追いかけろとボンゴレに言われましてね」 「ボンゴレ・・・?あぁ、10代目か」 「温厚なあのボンゴレをそこまで言わせる貴女に興味を持ちましてね」 「はっ、好奇心旺盛だ・・な」そこで一旦、会話が途切れた。 (けれど、奴は目線を逸らさないで、オッドアイの目が私を映していた) カチャリ、という音と共に額に冷たいモノがあたった。(これは、) 銃口があたったのだろう、と思う。 「ようやく、殺してくれるん・・だな?」 「貴女、その口調やめたらどうです?」 「無視か、」 「ええ、無視ですよ」 「・・・」 「・・・」 「殺・・・せ、」 「言われなくても」 ようやくこれで、自由になれるのだ。コイツとの長かった追いかけっこも、これでお仕舞いだ。 (疲れた、な)「お前、・・・いや、骸、」「なんです?」「結構、綺麗な顔してるな・・、」 「それは貴女もですよ」「また、会えるか」「さぁ、どうでしょうね」 多分、私とコイツは通じ合っていたと思う。いや、事実、通じ合っていた。 けれど、私は罪人で、コイツはマフィア、結局交わることができないことは運命だったとしか言いようがない。(だから、) 最初から言葉などにはしなかったし、態度にも表そうともしなかった。 (これで、これでよかったのだ)「そろそろ、潮時ですね」「あぁ、・・」「Arriuederci・・・」 バァンッ、銃声が辺りに響いた。嗚呼、これは・・・走馬灯?って、いうんだっけ。 なんか、どう・・でもいいことばっか、思い出す・・な。あれ、骸、・・泣いてる? 「ははっ、泣いてるなんて、お前らしくねー・・よ」「ええ、・・そうですね」「また、」 「・・・」「また、会おー・・・ぜ」「ええ、また・・・また、会いましょう」「、好き・・よ」 身体が冷たくなっていくのがわかる中、右手だけが暖かかった。 走れ、 逃げろ、 |