私は只今あちこちの雑貨屋を渡り歩いている。今の店で丁度8件めになるだろうか。 全然いいモノが見つからない。うー・・・ん。多分、今日気づいたのがいけなかったんだろうな。 しかも、昼休みだ(1日の半分過ぎちゃってるしね)私はクラスメートに「ごめん!早退するわ」こう言って、急いで学校を出てきた。 え?そんなことのために早退するなって?ま、気にするな!(え) 私の彼氏の"不二周助"は今日が誕生日だ。うん、今日っていうか・・・昨日なんだけど、今年は閏年じゃないから、今日祝おうかな、と思っていた。 っていうか、これでプレゼントを買えなかったらさ、学校を早退した意味なくないですか? 大体、不二ってどういうものが好きなんだよ・・・前に写真を撮るって言ってよな。 ・・・アルバムとかがいいのかしらね、うん。もしくはサボテンとか?飾ってるって言ってたな。 うー・・・ま、いいか。そういえば、私ってば・・・彼女のくせになにも知らないよなあ。 不二の好きなもの、好きなこと、好きな色とか・・・あれ、全然知らなくない? 人間失格ならぬ彼女失格ってやつですか?でも真正面から聞くのは正直恥ずかしいんだよね。 不二って、はっきり言って、付き合って初めて知ったこととかたくさんあるんだよね。 なんか、人をからかうのが好きだったりすることとかさ、うん・・・私ってば、何回からかわれたっけ・・・? あ、でも・・・優しい時とかめっさ綺麗な笑顔をするんだよね。 彼女の特権ってやつですかそうですよね。あー・・・神様仏様不二様! どうか、この店が最後のお店になってくれますようにお願いしますよ



「いらっしゃいませー」



私が入った途端、店員さん達の声が店内に響いた。あ、ここの店雰囲気好きかも・・・。 あれだよね、甘すぎなくてそれでいてさっぱりしすぎないってやつ(わかんないよ) ま、私が好きなのはほどほどな雰囲気ってことさ! ここなら、いいのがありそう・・・どこを探せばいいのかな? 文房具とか、不二揃ってるだろうしなあ。・・・やっぱり、写真をとっておけるアルバムとかがいいのかな? 実用的だろうし・・・何より、使ってもらえるっていうのが嬉しいよね。はい、決定ー! そうと決まればさ、それを探さなくちゃね、うん・・・あれ、アルバムってどこにあいてあるんだろう?雑貨のところになるのかな? ま、いけばわかるよね。そういやあ、写真とか一緒に撮ったことあったっけ? あれ、ないような・・・私に記憶が残っていないだけか、あるいは・・・実際に撮っていないかのどちらかなんだろうけれどさ、明らかに実際に撮っていないよね。 (考えてすぐにわかっちゃったけどさ)なんか、悲しいかも・・・一応は彼女なんだから、彼女っぽいことしたいな!とか、心の中で言ってみるけど私も一応陸部だし・・・不二だって、テニス部のレギュラーだしね。 お昼を一緒に食べることと一緒に帰ることくらいしかできないんだよなあ・・・メールとかも帰って疲れて寝ちゃうからできないし。 う、わあ・・・彼女失格じゃね?やばい、いつ嫌われてもおかしくないっていうか、嫌われてるんじゃね?みたいな。あー考え出したらキリがない! 今は不二のプレゼントを選ぶのに集中しよう・・・あ、これじゃね? これだよ・・・結構いっぱいあるのね。んー・・・あ、不二の好きな色はベージュだったような気がする。ベージュのっていうと・・・これ、か。 う・・・ん、なかなかシンプルだし、よくね?



「不二、喜んでくれるかな」



切実にそう思った。商品を持ち、会計へと進んだ。・・・うん、値段は結構したけれど気にしない! うん、今月ピンチに陥っちゃったけど気にしない!(不二が喜んでくれるなら!) さて、買ったはいいけれどさ、・・・どうしようか? なんか気づけば真っ暗になってるしね、えー・・・っと、7時前・・・ね。 どうだろう・・・冬季部活時間はとっくに過ぎているけれど、男子テニス部はどうなんだろうね?自主練習とかしてたりする系かな・・・あ、それはないな。 じゃあ、電話すれば出てくれるかな・・・あ、私が不二家に行けば早いのか。 (ふじやじゃないよふじけだよ)(不二のお母さん優しいんだよなあ・・・いいよなあ・・・お姉さんも優しいしね)そうと決まれば、まずはうちに連絡だね。 ピッポ、パッポ、ピッ・・・「あ、もしもし?母さん?あれだよ、あれ。ん、・・・違う! 泊りではないの、決して!少し、寄るところあるからさ・・・えっ? あー・・・じゃあ、9時までには帰るよ。うん・・・ん、じゃね」ピッ ・・・母さん、絶対電話切った後父さんになんか言ってるよ・・・帰るといつも父さん仁王立ちしてるんだもん(いいじゃんねー?健全なんだしさ) 兎に角、うちには連絡おっけー!さて、それでは今から不二家に突撃ですね! (突撃隣の晩御飯ならぬ突撃不二家に訪問だー)










*
*
*










はい、勢いにのってですね、一応不二のお宅の前にいたりするんですけれども・・・ あれですよ、呼び出しづらいっていうか、 その・・・いざとなると結構緊張するっていうかなんていうか、あーなんかもやもやする! すぅーはぁーすぅーはぁー(深呼吸中)・・・よし、とととと突撃開始するど! (どもりすぎじゃね?)「ごごごごめんくださー・・・い」 「はい・・・あら、ちゃんどうしたの?」 「あああの不二・・・じゃなくて、しゅ周助くんにっていうか、周助くんに会いにきま、来ました」 「あら、そうなの?じゃあ、今呼ぶわね」不二のお母さんはニッコリと笑って、不二を呼んでくれた。 「周助、」「なに?母さん」「ちゃんがいらっしゃったわよ。降りてらっしゃい」 そういうと軽い足音が聞こえた。どどどどうしよう・・・私の心臓も足音が近づくに連れて大きく激しくなってきちゃってるんですけど! う、わあ・・・本人きて、私大丈夫なの?!ね、大丈夫なのかな?! 不二のお母さんはというと、「じゃあ、多分降りてくると思うから・・・ゆっくりしていってね」なんて言って、リビングの方へ(だと思う)戻っていったよ。 (本当、癒しなお母様ですよね)(っていうか、この一家が癒しなんじゃないですかね) ちょっと違うこと考えたら落ち着いたぞ?この調子で普通に過ごせ、過ごすんだわかったな私よ! 自己暗示をかけたあと、丁度不二が顔を覗かせた。あ、ももももしかして・・・私服、? え、ししし私服ですか?!はは、初めてかもしれないような初めてだよ! めっさ感動していたら、不二がニッコリ笑ってくれて、「どうしたの?」って言ってきた。 うっ・・・やばい、また緊張してきたよ



「えっとえっとえっと」
「あ、寒かったよね。折角だし、中に入ってよ」
「あああありがとうございま・・・す」



不二の家は暖かかった。なんていうか、温度的にも丁度良かったけど! なにより、雰囲気が暖かかった。心に浸透していく、暖かい空気。 吸い込むと口から気管を通り、肺へとゆっくりゆっくりと循環し、身体は温かくなっていった。 嗚呼、暖かい・・・な。 勿論、一番落ち着くのは私の家だけれども・・・それとはまた違う意味で落ち着くな、不二の家はさ。 「僕の部屋でいいかい?」なんていきなり聞いてくるもんだから、ちょっと上擦った声で答えてしまった。 「え?あ、いいよ・・そんな、十分だよ」「そう?ならいいけど・・・どうぞ」 そういわれて入った部屋は、まさにシンプルイズベストってやつでですね・・・はっきり言って、私の部屋よりもスッキリしてみえます。 (私の部屋は綺麗といわれれば綺麗なんだけど、無駄なものが多すぎるんだ) ヤバいぞ、これは・・・私、彼女失格であり女失格であるかもしれないよ・・・! ちょっとさ、女としての自信なくなってきちゃったよ(ずーん) 本当、悲しく・・・あ、真面目に目から汁が・・・!( お 前 ) 不二はちなみにお茶を運んでくれるそうで・・・あ、手伝ったほうがいいのかな? 「ふ、不二・・・?手伝ったほうがよかったらする?」 「いや、いいよ。はゆっくりしててよ」はいーあえなく却下でしたね(ま、不二は一応お客な私に気を遣ったんでしょうけどね!) あーどうしようどうしようやっぱり緊張するよ!すぅーはぁーすぅーはぁー(深呼吸中) 「おまたせ、」「ぐっ・・・ごほっ」「大丈夫かい?」「ん、平気・・・」「紅茶でいいかな」 「え、紅茶?」「あれ、嫌かな?」「ううん!大好きなの!やったー」不二は私の隣に座った。 うっ・・・と、隣に自然と座ってくれたよ。どうしよう、めっさ緊張する



「ゆっくりできたかい?」
「うん、ありがとう・・・」
「それで、用があったんじゃないの?」
「あ、っと・・・ええと、その・・ですね、」
「うん?」
「お、そくなっちゃったけど、その・・・(ごそごそ)、コレ・・・をですね、」
「これは・・・アルバムかい?」
「うん、あの・・・誕生日プレゼントっていうか、」
「そっか・・・ありがとう」



反則だと思われます。レッドカード、でも退場はありませんよ。 退場されたら、困りますもん私ね。あーっと・・・渡しちゃったよ。 でも、ま・・・一応お礼言われたからいいのかな、なんてね。 (使ってもらえるかすらわからないのにさ、単純なやつだよね、私ってばさ) 少し、暴走気味だった心臓は落ち着きを取り戻していた。あー渡す時変じゃなかったかな。 変だったらどうしよう・・っていうか、今のうちだよね。いろいろ聞けるのはさ。 き、いちゃったりしていいのかな?「ふ、じ・・・あのさ、」「なに?」 「私ね、色々考えたんだけどさ、」「うん」 「私ってば、不二のこと全然知らないなって思ってさ。で、今から色々聞いていっていいかな?と思ったりするんだけどな」 「クスッ・・・いいよ」 え、マジで?!っていうか、めちゃめちゃ視線が痛いなとか思ったけど気にしないことにする! やっぱり、私は自己中だったのかな。 普通の人だったら、私と不二が付き合っている期間があれば、結構分かり合えるんだろうな? 私は自分のことがいっぱいいっぱいで、でも、不二は嫌がりもしないでくれてて・・・本当に、感謝しないとなんだな



「え、と・・・じゃあ、最初の質問ね!」
「どうぞ」
「好きなものやことを教えてください!あ、写真撮るよとかサボテンとかは知ってるからね!」
「あー・・・じゃあ、しいていうならね」
「うん」
「テニス」
「あーテニスがあったね!」
「じゃあ、僕からもいいかな?」
「え、不二から?どーぞ」
「まずさ、うちで不二っていうのはおかしくない?」
「うっ・・・確かに。不二だもんね、皆さん」
「名前で呼んでよ・・・これからも、ね」
「うっ・・・努力するね」
「僕だけ名前で呼んでるのは悲しいよ」
「ごめん・・・」
「それと、これも一つ知っておいてね」
「なに?」

「僕がのことをどれだけ想っているか、ね」



嗚呼、どうやらですね、この気持ちは一方通行ではなかったらしいです! ふ、・・・しゅ周助も私のことをおおお想っていてくれていたっていうか、うん、想ってくれていたみたいなんですよ。 うわあ・・・嬉しいかも、いや、めっさ嬉しいんですけど! あー・・・こんなに胸が躍っているように感じるのは・・・生まれて初めてです。 あ、そうだ。ちょっと、忘れかけていたんだけどさ・・・今日の目的はあれだよ、あれ・・・そのね、



「ふ・・・、しゅ周助」
「なに?」
「えっと、その・・・は、」
「?は?」

「はっぴーばーすでー、ってやつですよ」





世界が変わる、瞬間

(そう、この日から一層ラブラブになった2人を学校で見かけるようになりましたとさ!)