理想は、鳥の囀りが自然と聞こえてきて、目を開けると眩しいほどの太陽の光がカーテンの隙間から見える・・・そんな感じの朝が一番素敵だ(そして、一番漫画でありそうな光景だろう) しかし、現実・・・そんなに甘くはない。 私が目を開けたのは10時であり、しかも鳥の囀りが聞こえたのではなくて、お母さんが私を呼んだからだった。「・・・起きてる?」ガチャ、「起きて、!」「ん、・・なんですか」「ちょっと、頼みごとしたいんだけど・・・いいかしら?」「なに?」 「慈郎くんのお弁当をね、持っていってあげてほしいのよ」はい、ここで問題。 今日は何曜日?はい、日曜日ですよね!「今日さ、あれ・・・日曜日だよね?」 「今日、練習試合らしいのよ」はあ・・・まったく、ジローはなにをしているんだろうか? 大体、なんでいつも私に頼むのかわからない。 そりゃあ、お隣さんだし、同じ学校だし、同じクラスだし、幼馴染だし・・・色々接点あるけどさ! でも・・・はっきり言ってですね、日曜日の朝は辛いですよ! 正直言って面倒くさいんだよ!(あ、本音がつい・・・)「えー・・・面倒くさいよ」 「じゃあ、私お小遣い奮発しちゃうからね!お願い、!」え、金でつるのか! お母さん、どうしちゃったの?!と、思いつつも、お金には負けます「くそう・・・お母さん、2倍だからね!」 私はそう言って、お弁当を受け取って即着替えて家を出た










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まったく、日曜日に練習試合だなんて・・・テニス部は大変ね(勿論、私は帰宅部よホホホ) さて、どこのコートなんだろう・・・? そして、ジローが起きてるとは思えないんだよね(絶対応援席とかで寝てると思うんだけどね) まあ、それにしても・・・あの金髪もじゃ頭が見つからないはずがない! くそう・・・まあ、ジローの場合はもじゃじゃなくて、ふわふわですけどね(あのふわふわはムカつくぜ!) あえて、例えるのならば・・・天使ですか? いや、天使じゃあないですけれどね(寧ろ、悪魔に近いですかね) あーあ、幼馴染ってのも楽しいことばかりじゃあないんだよな。 ジローだから、呼び出しも少ないと言えば少ないけれどね・・・たまに、ジローに誘われてテニス部に遊びに行ったりすると大変ですよ(次の日なんか、めっさ人数多いんですよ) ちなみに、お弁当を持っていくのなんてしょっちゅうだったりするんですよ(今日が初めてではないのです!) あー・・・あそこに見える軍団は、・・・氷帝のジャージか? ああ、そうだな(女子が酷いですよキモチワルイくらい多いですよ) 人混み、嫌いなのになあ・・・気合をいれていこう! 「ちょ、すいませ・・・あ、通してください」 とても視線が痛いですけれど、でも・・・もうすぐお昼時ですから、お弁当は必要でしょう? ああ、やっと人混みを抜け出せました。 そして、フェンスの一番前・・・少し離れたところでレギュラーも揃っていた



「あ、宍戸」
「あ?じゃねえか。どうした?」
「ジローがまたお弁当忘れちゃってさ」
「届けに来たってわけか」
「ぴんぽーん。そうです」
「いつも悪いな」
「もう慣れたよ」
「ジロー起こしてくっから。そこで待ってろよ」
「わかった」



あ、ここの控えの場所は相手の学校の控えの場所と近いんだ。 あー・・・あれは、えっと、んーと・・・どこの学校だったっけかな? まあ、あとで宍戸にでも聞こうかな。あー・・・今、戦ってるのは・・・岳人と忍足かな。 ここから見て、赤い髪と青っぽい黒い髪のコンビってそうでしょ? 黒い髪と白い髪だったら、宍戸と長太郎だろうしね! あー・・・本当、カラフルだよなあ・・・まあ、向こうの学校も結構カラフルだけどね。 あー・・・金髪って、中学生なのにいいのかなあ? ちょっと、本当心配になるよ(ちなみに私はまだ黒いままです) あー・・・なかなか来ないな「悪い!ジローが途中で何回も寝ちまってよ」 「あー・・・倒れるように寝たでしょ?」「当たりだ」 「ごめんねー、」「いや、もう慣れたし・・・いいよ、はいこれね」 まあ、私もただで届けにきてるわけじゃあないし、それに・・・「ありがとー」ジローの天使の微笑みを見れるのは、嬉しいからね。 ちょっと、私も癒されますよ「あ、そうそう・・・今日の練習試合の相手はどこの学校なの?」 「ああ、今日は「立海だよー!」「ジロー・・・お前な!」 にししし、と笑うジローも可愛くて・・・っていうか、笑うジローは可愛いです(断言しますよ) 「立海って・・・確か、強いんでしょ」 「ああ、レギュラー全員が全国区「丸井くんもいるよー!」 「ああ、ジローが目標にしている人だったっけ?」1年の・・・じゅにあせんばつとかいうののあととかはすっごいまるいくんまるいくん言ってたな



「おい、ジロー!お前アップしておけ」
「あー・・うん、わかったー」
「あ、いってらっしゃい」
「今日は見ててよ!俺頑張るCー!」
「わかったわかった」



タタタタッと走っていってしまった「元気だよね」「ああ、あいつが起きてると賑やかだぜ」 「はは!」でも本当に起きているときは、そこに太陽があるかのように雰囲気が明るくなる。 ジローは不思議だ。「あ、これ・・・ジローのタオル?」 「あいつ、落としていきやがって・・・」「私、届けようか?」「場所、わかるか?」 「うー・・・あっちに行ったよね」「まあ、・・・壁があるところだろうな」 「えっと、壁打ちとかするからだよね?」「ああ」 「・・・多分大丈夫だよ、うん。じゃあ、届けに行くね」 私はジローが行った方向へと歩き出した(多分、こっちで当ってるとは思うんだけどなあ・・・大丈夫だよね) でも、・・・こっちの方向なんだろうけどさ、うん・・・別れてるなんて思わなかったな(さて、右か・・・左か・・・どっちだ?) 私がきょろきょろしていると、多分今日の対戦校の生徒であろう人が見えた。 ・・・聞けば、わかるかな(でも、私人見知りするんだよなあ・・・ちょっと、怖いんですけど・・大丈夫、だよね) 私は、すぅー・・・と息を吸って、よし、と気合を入れた(勇気を出して、よし・・・いくぞ) 「あ、あの・・・すいません」振り返ったのは、うちの岳人よりも赤い髪をしている風船ガムを膨らませている人だった(あ、なんか優しそうな人・・・っぽいんだけどなあ)



「あ、あの・・・金髪の、えっと・・・髪の毛がふわふわ?してる、うちの男子見ませんでしたか?」
「あー・・・それって、芥川のことだろぃ?」
「あ、知ってるんですか」
「おう。俺は見てねぇけど・・・ジャッカル!」
「なんだ?」
「芥川見たか?」
「見てねぇけど・・・」
「って、わけだ」
「そうですか・・・ありがとうござい「どうしたんじゃ」



頭を下げようとしたら、後ろから声がした。 私は驚いて後ろを振り向くと、チョタと同じ髪の色・・・銀髪で髪を束ねている人と目が開いているのかわからない人がいた「あー・・・芥川見たかって聞かれてよ」 「俺は見てないぜよ」「俺もだ」「そうか」 それにしても、みなさん身長が高い人達ばかりで、ちょっと怖いですよ(私、155pですよ?みなさん、高いですってば) 「あ、あの・・・ありがとうござ「どうしたんですか?みなさん集まって」っていうか、なんで私の台詞を遮ってくるんですかね? ちょっと、私ありがとうございましたって最後まで言えてないですからね? 「お、柳生!お前は芥川見たか?」「いえ、私は見ていませんけれど・・・」 「誰も見てねぇのかよ・・・残念だな、芥川どうかしたのか?」 「えっと、アップしにいったんですけど・・・タオル忘れて行っちゃったんですよ」 「あー・・・芥川らしいな」そういえば、この人は知っているんだった。 ジロー・・・他校の人にも知られてるって、凄いね「ところで、」「はい?」 「お前さんは、芥川の彼女かの」「か、彼女?!」 私は必死に首を横に振って、否定した「私はただの幼馴染ですよ」「そうなんか」 残念そうな顔をされても困るんですけどね? 「あ、先輩達・・・こんなところでなにしてるんスか?」 えっと・・・後輩くんかな?先輩達って言ってるところからみると、っていうか、・・・髪の毛もじゃくん「あー赤也、お前芥川見た?」 「芥川さん?見てないッスけど・・・」それにしても、この赤い髪の人・・・律儀だなって思う(だって、来る人にいちいち聞いてくれてるんですよ?律儀ですよね)



「そういやあ、この人誰ッスか」
「私?」
「氷帝の人ッスよね・・・マネージャーとか?」
「違います」
「芥川さん探してるのって、アンタですよね?・・・芥川さんの彼女とか」
「さっきも言ったけど、違います」

「・・・先輩、」
「なんだ?赤也」
「ちょ、可愛くないッスか」
「ああ・・・俺も最初思った」
「うん、基準よりは可愛えのう」
「お前の基準は高いんだよ」

「どうかしましたか」
「いや・・・別に」
「芥川さんの幼馴染ってことは、俺よりも年上ッスよね」
「あ、2年生?」
「うっす」
「そっかー・・・後輩がいるっていいよね」
「そうッスか?」
「うん」

「そうだ、先輩・・・名前はなんて言うんスか」
「私?だけど、」
「俺、切原赤也ッス!」
「切原くんね」
先輩、携帯とか持ってます?」



あ、名前で呼んでくれてる・・・嬉しいかも(チョタは先輩だし、日吉はさんだし・・・ちょっと新鮮かも)「持ってるよ」 そういうと、切原くんは携帯を出して「ケー番教えてくれません?俺のも教えますから」 「あ、交換?いいよ」「あ、赤也抜け駆けずりぃ!俺もしていいか?」 「じゃあ、俺もしたいのう」・・・えっと、嬉しいんですけどね? みなさん、かっこよすぎです(そして、そんなに見られるの、恥ずかしいんですけどね?可愛くもないし・・) 「えっと、みんないいから・・・えっと、名前を教えてください」 「俺は、丸井ブン太!シクヨロ!」「俺は仁王雅治じゃ」 「あ、えっと・・・丸井くんに仁王くん?」私がいうと、2人は頷いた。 っていうか、すごいな、私・・・1日のうちに他校に友達できちゃったよ(すごいことですよ、本当にね)「えっと、・・・じゃあ、赤外線あるかな?」 「俺のはあるッスよ」「あるぜぃ」「俺もじゃ」「じゃあ、送るね」 私は携帯を弄って、3人へと送った。っていうか、男の子とって、初めてかも・・・! (わぁ・・・嬉しいな)ちょっとるんるん気分でいたら、後ろから声がした「え、?なにやってんのー」・・・ジローだよね



「ジロー?」
なにやってんだCー」
「ジロー探してたんだよ!」
「俺?」
「タオル置いていったじゃん」
「あーどおりで!このタオル?」
「そう。っていうか、ほら・・・汗かいてるじゃん」
「あ、ありがとー」



私が汗を拭いてやると、ジローは今気づいたかのように立海の人達を見て、驚いていた「あれ、・・・仲良かったの?」「え、違うよ?ジロー見たかって聞いたら、仲良く?なっちゃった」あれは、仲良く・・・だよね? きっと、ケー番聞かれちゃったしね「丸井くんだ!丸井くん、久しぶりー!」 「お、おう・・・元気だったか?」「うん、超元気だCー!」・・・あれ、丸井くん・・? ってことは、この律儀な人は、「ジローの言ってた丸井くんって、丸井くんだったんだね」 「(な、なんか俺有名?)お、おう・・・?」 少し、丸井くんは戸惑っているみたいだけれど・・・まあ、いっか。 そう思っていると、ジローは私の後ろから抱きついた。 っていうか、覆いかぶさったというか、まあ・・・ようするに、抱きしめられました「え、ちょ・・・ジロー?」 少し、戸惑いながら私はジローを見上げた。 そして、次に聞こえてきた言葉は、「立海のみなさん、は俺のだからね!丸井くんでも、あげないCー!」えっと・・・それは、どういう意味なんでしょうね? ジロー「芥川・・・お前な、」 「だって、宣言しなくちゃ・・・とられちゃうでしょ?まだ、俺はなにもしてないけどねー」 私は未だ抱きしめられたままだ。意味は・・・よくわからない(とられる?とられない?なんのことなんだろう)「まあ、ちゃんはわかっとらんみたいじゃがのう」「は、はあ・・・」私はもう一回ジローを見上げたら、ジローが耳元でこう囁いた「俺のこと、嫌い?」 あー・・・まったく、ジローは確信犯だろう(お弁当のこともタオルのこともそして、こうなることも予想済みだったのだ)





確信犯
(まったく、ジローは自覚してやっているのか、無自覚なのか・・・まあ、どちらにしても私はジローの思い通りになってしまうだろう)