あの状況は今でも鮮明に思い出せるのだ、俺は・・・忘れようとも忘れられるはずがないのだからね(そう、俺は動けなかったのに、は・・・は、しっかりと動いていたのだ)は、俺の横をすっと通り過ぎて、小さい子どもを助けた。多分、ボールを持っているところをみると、子どものよくある飛び出しだったのだろうと俺は思う(俺はそんな子どもに怒鳴りたくなってしまったのだ・・・俺の方がガキなのだ)は躊躇せずに、飛び出して、小さな子どもを抱え込むようにして・・・轢かれた(勿論、小さな子どもは無傷というわけではないけれども・・・それでも死ぬということはなかったのだ)は、最後まで意識はあったと思う。俺が急いで駆け寄って抱きしめたときは、俺の服に血がつくことを気にしていた(そんなの・・・関係ないのに!)「ジロ・・・ち、つくよ?」「もうしゃべらないで!」「ジロ・・ー・・・すき、だよ」そういうまでのところは覚えている(多分、そのあとは俺が混乱して、救急車が来たのかすら、わからなかった)俺は、救急車から降りてきた人に「をたすけてください!おねがいします!」その言葉だけを、連呼していたと思う。を、たすけてください・・・と、何回も何回も・・・ね(そう、それはまるで壊れたCDみたいに、何度も・・・何度もね)救急車には一緒に乗れず、俺はその場に残った(それは、のもっていて、助けるために手渡されたバックと手渡されなかった私物を拾うためであり、その場を記憶するためだ)俺は、目を離さず、数十分くらいじーっと見ていた(血の海の道路、の衣服の切れ端・・・靴に、・・・あれ、)これは・・・と思って拾うと、携帯だった(のじゃん・・・どうして、・・・あ、これは・・・)そう、携帯には俺とのプリクラが貼ってあった。俺はそういうのは貼らないのだけれど、やっぱり、女の子はそういうのが好きみたいだね・・・の泣き顔に怒っているときの顔、嬉しいときの顔と悲しいときの顔と・・・俺といるときにしか見せない、俺だけが見れる・・・あの、女の表情を思い出した(ああ、それでも・・・なにか、心がすっぽりと開いているみたいだ)ああ、・・・帰ってきてはくれないの? ね え 、 帰 っ て き て よ ! |