思わずごくりと息を呑んだ。まさかこんなにも人がいるとは思ってなくて、私はぼーっと突っ立ってしまった。日吉くんは、「行かないのかよ」といった。私ははっとして、首を左右に振った




「う、ううん!行くよ!行く行く」
「逸れるなよ」




私はこくりと頷いて、日吉くんが歩き出した後ろについていった。日吉くんは背が高くて私は喋るときに見上げる形になってしまうのだけれど、目が合わなかったことはあんまりないと思う




「ぶっ」
「・・前見て歩けよ」
「わ・・わかってる、よ!」




鼻が痛い。ちょっと日吉くんのことを考えすぎたみたいだ。日吉くんの背中に思いっきりぶつかってしまった。私は顔を抑えながら歩いた。なんとなくだけど、人が増えてきたような気がする




「日吉・・くん」
「何だ」
「あ・・あっちの、射的したい な」




私は結構離れている射的のほうを指差した。日吉くんはそっちのほうをじっと見つめて、私のほうに向き直った。日吉くんは、「射的・・できるのか」といった。私は笑って、「し、失礼な!で・・できる よ!」といった




「じゃあ行くか」
「うん!」
「ひとつくらい当てろよ」




にやりと笑って、私の手をとった。あんまりにも自然な動作で、私は驚いてしまった。あれ・・日吉くんて、こんなんだったっけ。涼しい顔をして手を繋いでいる日吉くんの顔をじっと見つめた





知らない鼓動