ふと時が止まったかのように、目の前の宍戸がさっきまで笑っていたのが嘘のように一点を見つめて止まった。目線の先はグラウンドで、正確に言うとを見ていた。そうか、女子は体育なのか。俺は目の前の宍戸とグラウンドでちょこまかと走り回っているを交互に比べるように見て、「宍戸」と呼んだ。だけど、宍戸からは応答がない。俺は、「宍戸・・宍戸ってば」としつこくいうと、宍戸は、「あ?」といった。俺は、宍戸に聞いた 「・・のこと好きなの?」 「ぶっ」 「図星かあ」 まったく、宍戸はわかりやすいなあ。見てて飽きない。俺はにやにやしながら、真っ赤になっている宍戸を見た。「真っ赤じゃん、宍戸」と笑っていうと、宍戸は「うるせえ!」と俺を怒鳴った。数人がこっちを振り向いた、ような気がした。そして、「じ、じゃあジローはいねえのかよ、その・・す、好きなやつ、とか」と聞いてきた。純情っていうのは、こういうのをいうんだろうな 「俺?いるよ」 「えっ?!(ま、まさか普通に返してくるとは思ってなかった・・!)」 「聞いておいて驚かないでよー」 宍戸もよく知ってる人だから、と付け加えると、宍戸はクラスメートの名前を手当たり次第に言い始めた。「大野か?坂江か?じゃなかったら、日高か?」と勢いよく聞いてくる宍戸に、俺ははははっと笑い飛ばして、「まさか!違うよー」といった。宍戸は本気で悩んでいるみたいだった 「本当にわかんないの?マジで?」 「・・おう」 「よく知ってると思うけどな・・」 というと、宍戸は驚いた顔をしていた。俺は、「なにも、宍戸だけがのことを好きなわけじゃあ、ないでしょ?」といった。宍戸は、「・・ああ」と答えた。すると、丁度女子の体育が終わったみたいで、教室にぞろぞろと入ってきた。もちろん、その中にもはいるわけで、俺は宍戸の方を見てからの方を見た。そして、立ち上がって宍戸に言うのだ 「俺、欲しいものは誰にもあげたくないんだよねー」 俺はそういい残して、のところへと歩いていった。最後に見た宍戸の顔が、忘れられない |