暑い。5月はまだ春だろうに、というか春なのになんでこんなにも暑いのか。私は照りつける太陽を手で遮って、先生がノックしてあがったフライを左のグローブでキャッチした。スパン、と音がして手がじんじんした。痛い。けど、気持ちがいい。近くないけど、割と近いテニスコートからはパコーンパコーン、とボールを打ち合っている音が聞こえる。「休憩!」と部長からいわれ、「ありがとうございました!」とあいさつをしてグラウンドをでた。




「暑いね」
「うん、今日は異常だよ!」
「焼けちゃう!」
「水いるひと!」
「あ、ください!」
「はい、」
「ありがとうございます!」




みんな、汗がすごい。私も人のことをいえないけれど。木陰にあるベンチで休もうと思ってそっちに向かおうとしたら、フェンスの向こうに同じクラスの芥川くんがいた。なんかこっちを見ているみたいだったから、私は「どしたの?」といって近寄った。すると芥川くんはびっくりしたように、「うお?!」といった。なんで、そんなに驚くんだろう?「あ、いや・・なんでも、ないよー」あはは、と笑って芥川くんは手を振った。




「芥川くん、部活?」
「うん、そーだけど」
「休憩中?」
「うん、そーだよ」
「テニス部って、あの跡部さ・・・くんでしょ」
「・・・今、跡部サマって言おうとしたでしょ」
「・・・くせで」
「っぶはははは」
「わ、笑わなくても!」
サン面白いなー!」




跡部サマだって!あはははは・・・と爆笑している芥川くん。いつも友達とかといるときは跡部様っていってるから、そのまま言おうとしてしまった。まさか、跡部様の友達の芥川くんに跡部様っていうわけにもいかず、慣れない跡部くん、といったんだけどなあ・・・。芥川くんは、「あー笑った笑った」といって、笑うのをやめた。そういえば、「芥川くんはなんでここにいるの?」木陰で休んでいればいいのに。




「んー」
「・・・」
サンを見にきた、かな」

「えっ?!」

「・・・なんちゃって!嘘だよ!」
「・・・なんだー」




驚いちゃった。そうだよね、なんで私を見に来るのか意味がわかんないし!そう自己完結させたら、「練習始めます!」と部長の声が聞こえた。私は、「ここからテニスコートの音結構聞こえるんだ!芥川くんも、がんばってね!」といって、グラウンドへ戻った。




ただ、ぼくはあなたに会いにきた