ああ、俺としたことが。くそ、痛いと思いたくないけれど痛いものは痛いぜ。今日の午前の体育の時間、男子はハードル、女子は100m走の計測だった。その時間に、不覚にも俺は転んでしまった。(しかし、転んだ理由があれだなんて・・・!)しかも、転んだときに手をついてしまったらしい。左の手首が痛い。・・・まあ、手を突かないで顔面から突っ込むよりはいいのだろうけれども。(・・・こんな手で、)(テニス、できるのか?)次の授業の担当の先生に断りを入れて、保健室へと向かった。




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「失礼します、」




保健室の中に入ったけれど、誰もいない。・・・保険医すらいない。(どういうことだよ、これ)(ったく、鍵くらい閉めていけっての)とりあえず、保健室に来た意味がなくなるのは嫌なので、湿布を探すことにした。やはり、棚にあるだろうと思い、棚をあさりだす。しかし、保健室なんて滅多に利用しないから、どこにあるかなんてわからない。がさごそとあさっていると、突然、「そこじゃないよ、」と声がした。(だ、誰だ・・・)




「その、下・・・」
「・・・、」
「(ごそごそ、)・・ほら、あった」




声の主はうちのクラスのだった。はそういって、俺に湿布を差し出した。それを俺は受け取った。(しかし、湿布を持っているこの腕、)(白すぎるし細すぎるだろ、これ・・・!)俺は、近くのソファに座り湿布をはろうとした。すると、「あ、片手じゃはりにくいでしょ?」といって、右手に持っていた湿布をとられた。(というか、俺されるがまますぎじゃないか?)は手際よく湿布を俺の左手へとはった。(湿布をはったところはひんやりと冷たくなって、)




「・・・悪いな、」
「どういたしまして」
「・・・」
「・・・」
「・・・は、」
「ん?」
「どこか、怪我したのか」
「んー・・・」




は、ん、と足を出した。少し赤みを帯びていて、痛そうだった。「さっきの体育でちょこっとね、」と笑っていった。そんなに見た目ほど痛くはないらしい。はもう1枚湿布を出して、自分の足へと手を伸ばしてはろうとした。そのとき、俺ははっとして、わからないようににやりと笑った。(そうだ、)




「おい、」
「なに?」
「はりづらくないか?」
「別に・・・大丈夫かな」
「遠慮すんな、はってやる」
「え、ちょ」




うんともすんとも言わせずに、俺はから湿布をもらった。(というか、奪い取った、といったほうが正しいな)そして、の足にそっと触れて、湿布をゆっくりとはった。「っ・・・、」は少し唇をかんで耐えていた。はり終えると、ため息が聞こえた。(、ため息つきたいのはこっちだ)用もなくなった俺は、「じゃあ、」といって保健室を出ようとした。そのとき、俺は耳元で、「そんなに感度がいいと、困らないか?」といってやった。横を通り過ぎたときに見えた、耳まで真っ赤にしたを横目にふっと笑って、俺は保健室を出た。




俺の思いも、俺の気持も