ああ、俺としたことが。くそ、痛いと思いたくないけれど痛いものは痛いぜ。今日の午前の体育の時間、男子はハードル、女子は100m走の計測だった。その時間に、不覚にも俺は転んでしまった。(しかし、転んだ理由があれだなんて・・・!)しかも、転んだときに手をついてしまったらしい。左の手首が痛い。・・・まあ、手を突かないで顔面から突っ込むよりはいいのだろうけれども。(・・・こんな手で、)(テニス、できるのか?)次の授業の担当の先生に断りを入れて、保健室へと向かった。 * * * 「失礼します、」 保健室の中に入ったけれど、誰もいない。・・・保険医すらいない。(どういうことだよ、これ)(ったく、鍵くらい閉めていけっての)とりあえず、保健室に来た意味がなくなるのは嫌なので、湿布を探すことにした。やはり、棚にあるだろうと思い、棚をあさりだす。しかし、保健室なんて滅多に利用しないから、どこにあるかなんてわからない。がさごそとあさっていると、突然、「そこじゃないよ、」と声がした。(だ、誰だ・・・) 「その、下・・・」 「・・・、」 「(ごそごそ、)・・ほら、あった」 声の主はうちのクラスのだった。はそういって、俺に湿布を差し出した。それを俺は受け取った。(しかし、湿布を持っているこの腕、)(白すぎるし細すぎるだろ、これ・・・!)俺は、近くのソファに座り湿布をはろうとした。すると、「あ、片手じゃはりにくいでしょ?」といって、右手に持っていた湿布をとられた。(というか、俺されるがまますぎじゃないか?)は手際よく湿布を俺の左手へとはった。(湿布をはったところはひんやりと冷たくなって、) 「・・・悪いな、」 「どういたしまして」 「・・・」 「・・・」 「・・・は、」 「ん?」 「どこか、怪我したのか」 「んー・・・」 は、ん、と足を出した。少し赤みを帯びていて、痛そうだった。「さっきの体育でちょこっとね、」と笑っていった。そんなに見た目ほど痛くはないらしい。はもう1枚湿布を出して、自分の足へと手を伸ばしてはろうとした。そのとき、俺ははっとして、わからないようににやりと笑った。(そうだ、) 「おい、」 「なに?」 「はりづらくないか?」 「別に・・・大丈夫かな」 「遠慮すんな、はってやる」 「え、ちょ」 うんともすんとも言わせずに、俺はから湿布をもらった。(というか、奪い取った、といったほうが正しいな)そして、の足にそっと触れて、湿布をゆっくりとはった。「っ・・・、」は少し唇をかんで耐えていた。はり終えると、ため息が聞こえた。(、ため息つきたいのはこっちだ)用もなくなった俺は、「じゃあ、」といって保健室を出ようとした。そのとき、俺は耳元で、「そんなに感度がいいと、困らないか?」といってやった。横を通り過ぎたときに見えた、耳まで真っ赤にしたを横目にふっと笑って、俺は保健室を出た。 |