「ねえ!ってば!」 「・・・んー」 今日はジローがいない。風邪で休みだそうだ。バカはなんとかってやつで風邪ひかないかと思ってたのに。そうか、バカじゃなかったのか。まあ、こんなことはどうでもいいのだけれど。ジローがいないとなんだか気分がのらない。やる気が出ない。楽しくない。つまらない。なにをしても上の空。私って普段どんなだった・・・? 「もう!・・・大丈夫?」 「・・・だいじょーぶ」 ウソ。本当は大丈夫なんかじゃない。私が私じゃない。なんで?・・・ジロー。ジローが足りていない。ジロー、はやくきてよ。私の隣はいつもアンタだけのものなのに、1人にしないで。なんていったって、今日は来れるはずがない。宍戸によると、熱がある・・・らしい。だから仕方がない。小さくため息をついて、空を見つめる。 「空ってさ、」 「?なによ、いきなり」 「いいよねー・・・」 友人が隣で、「こりゃだめだ」っていってるのを横目に空をじっと見つめる。今日はもう帰りたいなー・・・。いつもは帰るのが嫌なのに。ジローがいないだけでこんなにも変わるんだなあ、と思う。すると、後ろからガラッと扉が開く音がした。振り返ると、 「よ!」 マスクをして、マフラーをぐるぐる巻きにして、帽子を深々とかぶって、手袋をしている右手をあげて笑っているジローがいた。「う、そ・・・」なんで、熱があるはずなのに。私はジローに駆け寄っていって、「どうしたの」といった。顔は少し赤くて、息がきれている。 「つまんねーから学校きた」 「は、・・・熱は」 「ある・・・けどへーき」 ニッと笑って、ブイサインをみせた。いや、どう見ても大丈夫ではないだろう。せっかく来たんだけれど、帰ってもらおう。これで悪化でもしたら大変だ。なによりも、うつされて学校で大流行しないようにしたい。 「ジロー、帰ったほうが・・・」 「オレ、に会いたかったC!」 「え・・・」 私の頭が理解しないうちに、抱きしめられた。テニス部で小さいっていわれてるけど、私からしてみれば、大きいジロー。見上げると、ニシシ・・・と笑っていた。なにがそんなに楽しいのだろうか。私はよくわからないけれど、抱きしめられたままでいた。すると、ジローが私と同じ高さまでしゃがむようにして、話し出した。 「はオレに会いたくなかったのか・・・」 「え、いや、そんなことは・・・」 「じゃあも、オレに会いたかったんだ!」 私はその言葉に反論をしないで、かわりにジローを抱きしめかえした。 |